せをはやみ

先日開催したフォーラムでも話題になって非常に盛り上がったのが、

社会問題解決型ビジネスに対して正しく評価できる人が少ないという話でした。

社会問題の解決型ビジネスを提案すると、

「社会貢献目的なのかビジネス目的なのか」と詰め寄る人がいます。

一見正しそうな指摘ですが、実はここには深い問題が横たわっています。

一昔前は、

これからは企業も金儲けだけでなく、社会に対して(税金を納める以上の)責任を果たして行かなければならないということが声高に叫ばれました。

いわゆるCSRの話ですね。corporate social responsibilityですね。

このCSRというのは本来は、株主以外の利害関係者に対しての説明責任や、意思決定の際に株主以外の社会的利益も考慮に入れなさいよという話だったのですが、

日本ではなぜか、企業も社会貢献活動に取り組まないといけない、という意味に捉えられています。

我が社はCSRの一環として、環境保全運動に取り組んでいます、とか交通安全運動に力を入れています等々。

ところが、このCSRについては、良いことをしている会社だということでイメージがよくなる以上の企業の業績にとってプラス効果がないのではないかということが言われてきました。(諸説あり)

そこで最近では、ポーター教授らが提唱するCSVの考え方が定着してきています。

CSVは、Creating Shared Valueの略ですね。紛らわしい。

CSVとは、企業が経済条件、社会状況や課題を改善することにより、企業自体の生産性も高まるという考えで、

要するに、本業が社会貢献にダイレクトにつながることがより競争力強化につながるんだ、というイメージです。

例えば、飲料メーカーのKIRINは東日本大震災の復興支援のため、2013年、2015年に福島産の桃と梨を使用した氷結を発売しています。

これはまさに本業を社会貢献に絡めた事例ですね。

近年、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は投資先企業が国連の掲げる目標であるSDGsにどれぐらい貢献しているかを投資先選定の基準の1つにしていることを明言しています。

これはまさにCSVの考え方の具現化で、

中長期的な成長企業の見極め方として、どれだけ本業がダイレクトに社会貢献につながっているのかという指標から判断しているわけです。

さて、そうすると、冒頭の

ある社会問題解決型ビジネスについて、

これは社会貢献かビジネスか、ということを問い詰める意味はさほどないことがわかってもらえると思います。

ビジネスで長期的利益をあけまるためにはそれが社会に貢献するものでなくてはいけないし、社会貢献が長続きするためには、それがビジネスとして成立していなければならない。

「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」

という二宮尊徳の言葉が響いてきます。

社会問題解決型ビジネスを評価する際には、是非このCSVの視点を念頭においてみてください。

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