ミニマムモデルを考えようシリーズの続きです。
今回は、お金の成り立ちについて考えます。
仮想通貨って何だろう、ということを考える材料にもなると思います。
まず、お金の誕生というのはどうやってできたのでしょうか。
古代メソポタミアにさかのぼります。メソポタミアは、今のシリアとイラクの間あたりですね。
この頃、人々は、食料調達手段のメインを農耕へと移しつつありました。
農耕が盛んになると、どうなるかというと
食物が余ります。
それまでの食料だった獣の肉や、果実と異なり、
小麦は蓄えることができたのです。
(人類において本格的な格差が生まれた瞬間といえるかもしれません。)
小麦を蓄えるとどうなるかというと、
盗まれる、襲われる心配が出てきます。
そこで、人々から、小麦を預かって守ってあげるリーダーが出てきます。
で、大きな蔵をつくって、みんなの小麦を守るわけですが、
それでは誰がどれだけ預けてるかわからなくなります。
そこで、文字が誕生します。
倉庫の管理者は、台帳に、
今誰の小麦をどれだけ預かっているかを記し、預けている人には預かり証を発行するのです。
この預かり証は、ただの板(あるいは貝殻)で、それ自体は何の経験的価値もありませんが、
それが、小麦の引き換え券となっていることから、交換価値があります。
そうです、これがお金の誕生の瞬間です。
この債務と通貨の関係は連鎖していきます。
余剰のある人間はさらに農耕を広げるために、人を雇って農地を広げます。
人を雇うときに、
この畑を耕してくれたら、収穫の時期に、小麦を〇キロあげる、ということを約束します。(キロという単位は使われていません。もちろん。)
その約束を貝殻に書いて渡すと、それがまたお金になります。
このように、お金がそれ自体の価値ではなく、
それが表している債権によって価値づけられている以上、
そこには信用(クレジット)がなければいけません。
この貝殻を持っていけば、必ず、倉庫から小麦を出してもらえるはずだ。
という信用が、お金の交換価値を支えるからです。
この話をすると、金本位制のことを思い出す方も多いでしょう。
かつては日本でも、紙幣が金や銀に兌換できる時代がありました。
とはいえ、それはイレギュラーな現象で、ほとんどの時代において、通貨は、金や、小麦といった現物と結びついていたわけではありません。
もちろん、現代においては、紙幣を銀行にもっていっても、銀も、金も、小麦ももらえません。
しかし、例えば日本円は、少なくとも日本政府に対して税金を払うときに決済手段になるという、担保があります。
税金を払わないと最悪の場合、懲役刑もあるので、懲役刑を免れる券としての価値はあります。
その意味では、兌換紙幣としての性質が完全に放棄されたわけではないといえるかもしれません。
では、兌換紙幣としての性質が全くない、つまり
どこの政府によっても、
通貨として認定されていない通貨でも、通貨として機能するのでしょうか。
(よく政府として認可していないコインでも流通する例として、マリアテレジア硬貨があげられることがありますが、マリアテレジア硬貨はそもそもオーストリアの硬貨で、その後もイエメンなどでは正式な通貨として扱われていたので、硬貨はいつまで硬貨足り得るか、という例としてならともかく、中央政府と無関係な硬貨の例としては不適切かなと思います。)
この問いへの答えは、ビットコインはじめ、仮想通貨の隆盛によって明らかなようにも見えます。
一時期の暴落はありましたが、現在でも安定して相場が形成されています。
しかし、ビットコインが闇マーケットでの決済手段として信用(クレジット)を得たように、
まず、どこかの決済手段として担保される、という約束(それが幻想だとしても)がなければ、
通貨としての流転は始まらず、
その約束してくれる主体(あるいはマーケット)がどれほど信用力のある主体か、ということにかかってくるということかなと思います。
要するに、発行元の問題よりも、決済手段として約束してくれる元の問題を吟味することが重要です。
もちろん発行元がいい加減で通貨供給量を操作できてしまうと通貨としての安定性はなくなるだろうけども。またこれは別の問題。
とりあえず、お金の成り立ちと、通貨の成立条件について、
ミニマムモデルから考えてみました。
父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
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この本では、
第二次世界大戦中に、ヨーロッパの捕虜収容所でタバコが通貨として機能するまでの様子が描かれていてめちゃくちゃ面白いです。