意思決定の科学

年末の振り返りの時期で、今年起こった色々な出来事について、振り返りをされている時期でしょうか?

あのときの意思決定はあれで正しかったのだろうかと省みている方も多いかもしれません。

そこで今回は意思決定について、いくつかの気をつけておいた方がいいと思うことを書きたいと思います。

1つは行動経済学の分野でプロスペクト理論というものがあります。

Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%AF%E3%83%88%E7%90%86%E8%AB%96)の記述が非常にわかりやすいので引用すると、

「例えば、以下の二つの質問について考えてみよう。

質問1:あなたの目の前に、以下の二つの選択肢が提示されたものとする。

選択肢A:100万円が無条件で手に入る。
選択肢B:コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。

質問2:あなたは200万円の負債を抱えているものとする。そのとき、同様に以下の二つの選択肢が提示されたものとする。

選択肢A:無条件で負債が100万円減額され、負債総額が100万円となる。
選択肢B:コインを投げ、表が出たら支払いが全額免除されるが、裏が出たら負債総額は変わらない。

質問1は、どちらの選択肢も手に入る金額の期待値は100万円と同額である。にもかかわらず、一般的には、堅実性の高い「選択肢A」を選ぶ人の方が圧倒的に多いとされている。

質問2も両者の期待値は-100万円と同額である。安易に考えれば、質問1で「選択肢A」を選んだ人ならば、質問2でも堅実的な「選択肢A」を選ぶだろうと推測される。しかし、質問1で「選択肢A」を選んだほぼすべての者が、質問2ではギャンブル性の高い「選択肢B」を選ぶことが実証されている。

この一連の結果が意味することは、人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向(損失回避性)があるということである。」

ミソは、「質問1で「選択肢A」を選んだほぼすべての者が、質問2ではギャンブル性の高い「選択肢B」を選ぶことが実証されている。」

というところですね。数学的には同じ意味でも人間はリスク回避を優先する傾向があるんですね。

これは当たり前の話で、人間も動物なので命は1個しかなく、いくら魅力的なリターンが見えていても死んでしまえば終わりなので、リスクを数学的なものより大きく見積もるように遺伝子レベルで刷り込まれているのだと思います。

大切なことは、色んな意思決定の場面において、この損失回避性のことを頭に入れておくことです。

新しく人を雇うとしてそのリターンはいくらでどれぐらいの可能性があるのか、支店を出すとしてどれぐらいのリスクがあるのか、

上の実験例のように明確な数値化をできるようなことはないでしょうが、それでも少しでも明確化しようとしてください。そのためのブレーンが周りにどれだけいるかが経営者の実力といってもいいと思います。

意思決定はとにかく早くしなければいけない時代ですが、それでもギリギリまで少しでも判断の精度をあげる努力を惜しんではいけません。

行動経済学は「使える経済学」なので是非勉強してみてください。

 

 

もう一つ意思決定のときに気をつけなければいけないのは、多数決の罠について。

経営において多数決が正しいとは限らない、というのは経営者はみんなわかってることだと思いますが、

とはいえ社内のルールづくりなどについて、スタッフの納得感を生み出すために多数決を行うことも多いと思います。社員旅行の行き先決めたりとか、お歳暮の内容決めたりとか。

で、その多数決ですが、実は、多数決というのは、設問の設定の仕方によってかなり結果が大きく変わるということがわかっています。

例えば、例えば社員旅行の行き先について、A案とB案とC案があるとします。これで多数決で一番多い案にします、とやると

A案 熱海 8票

B案 別府 7票

C案 白浜 4票

でA案が勝つとします。

ところが、B案とC案に入れた人たちの中には、熱海だけは嫌だという人がかなりいたとします。

そうすると、仮にこれが、熱海かそれ以外か、の投票であったなら

熱海9票

熱海以外10票

で熱海案はなくなっていたかもしれません。B案とC案に入れた人の中で熱海にいれたのが1人しかいなかったパターンですね。

こういうことをなくすために決選投票方式を導入したり、1位3ポイント、2位に2ポイント、3位に1ポイント入れる方式(ボルダルール)を導入したりしますが、

結局のところ、設問の設定の仕方が勝負ということなんですね。

(日本では会議の議長というポジションが余り重視されない傾向がありますが議長というのは、いつ採決するか、どういう形で採決するかなど広く裁量をもっているので、実は影響力を行使できる需要な役職なのです。脱線。)

多数決する前には、この設問の立て方は正しいのか、を一度考えてみてください。

もう1つ、先日あった相談ですが、社内に話し合いの文化を作りたいということでどうしたらいいか

という話で、社内の全体会議のプロデュース的なことをさせていただきました。

この会社の社長さんは優しすぎて、全体会議のやり方を決めるのにも話し合いをしようとしていてうまくいかなかったんですね。

僕が入ったら、ビシバシ、もうこのルールでやりましょう、とりあえず全体僕のいうとおりのやり方でやってもらって不都合が出たら変えていってください、ということでズバンといきました。

民主主義は民主主義からは生まれない、というのは政治学の世界では常識です。

これは会社でも同じで、社内の話し合いの文化をつくろうと思ったらそこに至るまでは独裁が必要です。

色んな意思決定の形についての気をつける点についてつれづれと書きました。

とはいえ最後は直観ですよ、直観こそが正解ですよ、という話はまた今度。

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