巻き込み力を難しい言葉で言っただけ

ブログ再開して、ばりばりアウトプットしていこうかなと思った矢先に読み出した本が面白くて、なかなかブログ書く気にならないのですが、

先日SDGs関連で勉強会したときに、

コレクティブ・インパクト

という考え方について話題になったので、その話を。

SDGsのような大きな社会的課題解決という目標へ向かっていくためには多数の関係者を巻き込んで解決していくしかないんだという「コレクティブ・インパクト」という考え方が広がっています。

これまで、それぞれの組織が、

ばらばらの目標に向かって

ばらばらに行動していたところを、

「連携しつつも、組織の独立性を保ちながらも、共通の目標に取り組む」

のが最も効果的だという発想です。

コレクティブ・インパクトで成果を出すためには以下の5つ要素を満たすことが重要とされています。

1.全ての参加者がビジョンを共有していること。

2.取り組み全体と主体個々の取り組みを評価するシステムを共有していること。

3.各自強みを生かすことで、活動を補完し合い、連動出来ていること。

4.常に継続的にコミュニケーションを行われていること。

5. 活動全体をサポートする専任のチームがあること。

イメージしやすいように一つ例をあげると、ノボノルディスクの中国戦略の例があります。

同社は、デンマークに本社を置く糖尿病治療に使われるインスリンの世界的メーカーですが、

世界市場全体では、イーライ・リリーアンドカンパニーや、サノフィにシェア争いの後塵をはいしています。

しかし、ノボノルディスクは、中国市場においては60%近くのシェアを誇っています。

これは、それまで糖尿病への理解が浅かった中国の医療業界に目をつけた同社が、

2002年に世界糖尿病財団を設立して、中国衛生部、中国科学院等と連携して、

20万人以上の医療従事者を訓練し、200万人以上の患者を教育するとともに、糖尿病への理解をすすめるメディアキャンペーンに多額の支出を行った結果です。

もちろん、これによってノボノルディスク社以外の競合他社にも中国市場へのチャンスは広がったわけですが、

このアクションの中でノボノルディスク社が築いた流通業者や、政府、医療関係者との緊密な関係性は、他社にとっては簡単には乗り越えられない壁になっています。

コレクティブ・インパクトについて理解しやすいと思ったのでスケールの大きな例を出してしまいましたが、

要は、大きなストーリーへと多数の人が参加してもらいやすい体制づくり、というのは、一見骨折り損のくたびれもうけになりそうに思えるのですが、

実際はそういうことはなく、プロジェクトの核となって動いている人々のところには、大きな成果がもたらされます。

近年では、地方創生の場面においても、これまで役所任せだった町興しを、もう一度民間の手で、「街の発展なくして自社の発展なし」という視点から関係者が全ての力を合わせて行っていこうという動きが広がっています。

ストーリー参加型マーケティングにおいては、このような今まで社会貢献活動として、ビジネスと切り離されていたものが、顧客も巻き込んで達成していくストーリーの一部として取り込まれることで、

公共と商売の境界線が薄れていくことになるのです。

言い換えると、今までは、全体のことは公的活動、一部の活動と区分けされてきたものが、その区別が難しくなってきているといえるでしょう。

しかし、このことは実は日本社会においてはそんなに奇異なことではなかったはずです。

我々日本人が、五穀豊穰を願ってお祭りを行ってきたことは私的なことであり、公的なことでした。

集落の中で、困っている人がいれば助け合い、仕事を融通しあって、秀でた子どもがいればみんなで学費を工面して出世を応援したというのはつい最近まで日本の地方で普通に存在していた共同体のあり方でした。

そこに、どこまでが私的でどこまでが公的か、という線引きをすることにあまり意味はありません。

一部は全部であり、全部は一部であって線引きはできない、という日本的、あるいは東洋的世界観が、マーケティングの世界でも妥当するようになってきているのです。

 

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