僕らが事業をする理由

僕のお客さんは、基本的には御紹介の方なのですが、

中には、御紹介者の方が、

「こいつは同じ時期に起業して同じぐらいのスピードで会社が成長してきたんだけど、最近伸び悩んでるのでみてやってほしい」

と、あんまり御本人が望んでいない御紹介というのがあります。

案の定、御本人社長とお話しさせていただくと、

「僕は大金持ちにならなくていいんです。レクサスにのって、百貨店で値段を気にせず買い物できて、年に2回家族と海外旅行に行けたら、それ以上のお金はいらないと思っています」

という話をされます。(もちろんですが、内容は多少変えています。)

で、僕はそれはそれで良いと思っています。

会社を大きくする、事業を大きくする、というのだけが人生の価値ではないと思っています。

そこの事業拡大へのモチベーションを上げてあげるというのは、非常に難しい。

僕からは、2つのことを話させていただきました。

1つは、

今自分が思っていることは、5年後も自分が思っていることとは限らない。5年前とあなたの考えは変わってきているように。
でも、考えが変わったときに、これまでそういう考え方で生きてきたからということに縛られないようにしてください。そのときそのときで考え方は変わっていっていいし、だからこそ人生は面白いし、そのことを受け入れる準備をしておいてください。

ということ。
これは僕が多数の経営者とお話ししてきて感じたことです。幸せな経営者は、器が大きいだけじゃなく、器が柔らかい。幸せの形は日々変わる。器もそれに合わせて変わらないと幸せを取りこぼしてしまいます。

2つめは、

僕が事業をする上で支えになってくれているいくつかの言葉を紹介します。

まずは、内村鑑三の言葉です。

内村鑑三といえば日露戦争開戦時に国中を相手にして非戦論を唱えた孤高のキリスト教思想家ですが、

日清戦争前に、有名な「後世への最大遺物」という講演をしています。(なんとこのとき鑑三32歳)

小品ですが、岩波文庫に収録され、今も広く読み継がれていて、100年以上経った今も色褪せません。

その中で、鑑三は、

後世に遺すべきものの第一はお金である。ということを言います。
世の中のほとんどの不幸はお金で解決できるのだからと。

そして、お金を遺せないのであれば、事業を遺すのが第2だといいます。世の中のためになる事業を行うはさらに世の中のためになる事業を生んでいくのだと。(具体的な事業の例として、同収のデンマルク国の話がわかりやすい。)

さらに、お金も事業も遺せないのであれば、思想を遺すべし、と言います。あなたの思想に影響を受けて、事業を起こす人が出てくるかもしれないからと。

そして、その3つというのはどれも誰にでも遺せるというものではないけれど、

高尚な生涯、というものなら誰にでも遺せる。これこそが後世への最大遺物だと言います。

そしてその根底に、

「この世の中をズット通り過ぎて安らかに天国に往き、私の予備学校を卒業して天国なる大学校にはいってしまったならば、それでたくさんかと己れの心に問うてみると、そのときに私の心に清い欲が一つ起ってくる。
すなわち私に五十年の命をくれたこの美しい地球、この美しい国、この楽しい社会、このわれわれを育ててくれた山、河、これらに私が何も遺さずには死んでしまいたくない、との希望が起ってくる。
ドウゾ私は死んでからただに天国に往くばかりでなく、私はここに一つの何かを遺して往きたい。それで何もかならずしも後世の人が私を褒めたってくれいというのではない、私の名誉を遺したいというのではない、ただ私がドレほどこの地球を愛し、ドレだけこの世界を愛し、ドレだけ私の同胞を思ったかという記念物をこの世に置いて往きたいのである」

という想いがあると吐露しています。
敬虔なキリスト教徒というイメージのある内村鑑三も、ただただ清貧に暮らしなさいと言っているわけではない、というのは僕たちに新しい視点を与えてくれます。

 

そして、あの関東大震災から東京を復興させた後藤新平が座右の銘としていていたという言葉。

「財を遺すは下、事業を遺すは中、人を遺すは上なり。されど、財をなさずんば事業保ち難く、事業なくんば人育ち難し。」

2人は同じことを言っていると僕は思っています。

 

また、

スティーブ・ジョブズの言葉

「墓場で1番の金持ちになることは重要ではない。夜眠る時、我々は素晴らしいことをしたと言えること、それが重要だ。」

これも同じことを言ってると思います。

 

この2つのお話をさせていただいて、その社長もそこから自分の事業について考えている色んな話をしてくださって、非常に良いセッションができました。(このブログに書くかもというのも快く承諾していただきました。)

今度、兵庫県の中小企業診断士協会で、中小企業診断士向けの事業承継の講座をすることになり、その準備をしています。

その中で、承継する「事業」とは何だろう、ということをじっくり考えていたタイミングでもあったので、僕自身にとっても非常に有意義な時間でした♬

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