生産性向上もマインドチェンジから

働き方改革の流れから生産性向上についてかなり注目が集まるようになってきました。

コンサルタントの業界もかなり細分化されてきていて、

僕のように新規事業や苦戦事業のビジネスモデルやビジョンを一緒に考えるのを中心にしているパターンもいれば

採用面接のやり方のコンサルティングだけやる人もいるし、

銀行対策だけをやるコンサルタントもいるし、

例えば工場の生産性をあげることだけをコンサルティングする人もいます。《実はこれがダイレクトに収益改善につながったりします。》

なので僕はあまり細かい生産性向上の話、例えばここの動線が悪いから社内の作業効率が落ちるのでどうのこうの、という話は苦手なのでしません。

ですが、社内の生産性向上に向けてのマインドチェンジの必要性については話をさせてもらいます。

ポイントは2つあります。

1つは、長時間労働=頑張っている、というマインドをチェンジするということ。

これは、スタッフ一人一人についてのマインドチェンジが必要ですが、その前に社長自身のマインドチェンジが必要です。

経営者の人情として長時間労働してくれてるスタッフには感謝の気持ちから有形無形の報酬を与えてしまいそうになりがちです。
あいつは頑張ってくれてるから、と。

でもそこを心を鬼にして、生産性向上させた人を評価することにしなければ社員のマインドは変わりません。

生産性向上させ自分の時間をつくって、自分のキャリア的成長、人間的成長に時間を注ぎ込めているかを評価軸に持ってくる必要があります。

それぞれのスタッフが自分の今の成長課題に向き合えてるか、これを検証するのが経営者の人材育成における大きな役割です。

そして、それを受けてスタッフのマインドチェンジが少しずつおこるのです。

2つ目は、経済学の基本中の基本ですが、比較生産費の概念を正しく社内全体に理解させることです。

比較生産費の概念とは何か

たとえば、有名な、アイシュタインとタイプライターの例があります。

アイシュタインは、
研究をすると1時間あたり10の成果をあげ、タイピングをすると4の成果をあげます。

これに対してタイプライターは、研究をすると1時間あたり1の成果しかあげれず、タイピングをすると3の成果をあげれます。

さて、この場合、アインシュタインとタイプライターが2人で協働して、最高の成果をあげるためにはどうすればいいでしょうか。

もちろん答えは、アインシュタインは研究に専念し、タイプライターはタイピングに専念することです。
2人に2時間ずつ与えて、研究とタイピングを半分ずつ行うと、全部で18の成果しかあげられないのに対して、
アインシュタインが研究、タイプライターがタイピングをすれば2時間で26の成果をあげられます。

これが比較生産費の発想です。

ここでのポイントは、

アインシュタインはタイピングの能力においてもタイプライターを上回っていることです。

目の前にタイピングの仕事がらあったとき、

アインシュタインにすれば、タイプライターに任せるより自分がやった方が早いのです。

ここで優秀なスタッフほど

自分でやったほうが早い病

にかかってしまいます。

でもそれは全体のためにならない。

アインシュタインも、地球にいる限り1日は24時間しかないからです。

心を鬼にしてタイピングの仕事はタイプライターに任せないといけない。

で、ここまでは結構出来てる会社が多いですが、

今度はタイプライター側が、

この仕事、お前がやったほうが早いねんからおまえがやれや、めんどくさいからっていちいち押し付けてくんなよ、私がやった方が早い仕事やりたいわ

と思ってしまってうまくいかないパターンに陥っている会社が結構多いんです。

タイプライター側も比較生産費の概念をしっかり理解しとかないといけない。

たとえアインシュタインよりタイピングが遅くても、タイプライターがタイピングをすることには全体の生産性をあげる意味がある。

このことがどれだけ浸透させられるかが本当に生産性向上させるための近道だったりします。

研究を営業に、タイピングを資料整理にあてはめると結構あたっている会社あるんじゃないでしょうか。
ここでの議論は、何を外注すべきか、という判断でも役に立ちますよ。

もちろん全ての仕事を数値化できるわけではないし、一瞬の生産性よりも長期の生産性を考えてあえて効率悪くても、その人をその業務につけるという必要がある場合もある。
本人の希望もある。

そこを調整するのが経営者の腕の見せ所なんだけど、

それでも基本は比較生産費の概念だということは忘れないようにしてほしいと思います。

※比較生産費の概念はリカードという人が、かつてヨーロッパに保護主義が蔓延したときに、自由貿易は結局全ての国を潤すのだということを明らかにするために使い出した論法です。
TP Pを巡る議論をみてるとまさに古くて新しい議論だとわかります。
経済古典もたまには役に立つ、の典型例ですね。

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