ゴールドラッシュの教訓

ブロックチェーンや、人工知能、遺伝子工学の目覚ましい発展が、ビジネス環境にとてつもないインパクトを起こそうとしています。
こんなときに起業家はどう振る舞うべきか、

というのは結構色んな会で話題にあがります。
意見を求められたとき、僕は150年前にカリフォルニアで起きたゴールドラッシュの話をします。

リアルなマイニングの時代の話です。しばしお付き合いください。

1847年 当時まだメキシコ領の小さな漁村の外れにある肥沃な渓谷だったサクラメントのある農場の中で、
突如、黄金が吹き出して来ます。
スコップさえあれば誰でも簡単に取り出せるほどの浅い地表に金脈があったというところに、ゴールドラッシュの奇跡があります。
当時、この農場を経営していたのは、ジョン・サッターという男でした。
ドイツ生まれで、故郷に家族と負債を残して新天地アメリカ大陸に渡って来たサッターさんは、地の果てとも言っていいカリフォルニアで歴史の主人公になったのです。
さて、もしあなたがこのサッターさんなの立場に置かれたなら、

自分の農場で突如金脈が発見されたという状況におかれたなら、
どうやってビジネスをするだろうか。
というのがこのテーマです。
ちなみに、当時のカリフォルニアは、警察権力はおろか所有権という概念も確立していない、文字通りの無法地帯だったそうです。北斗の拳の感じですね。

さて、歴史を紐解くとサッターさんは、残念ながらこの奇跡を前に上手く立ち回ることができませんでした。
人間はあまりにもスケールの大きな事態に直面すると思考停止してしまうもので、サッターさんは、それまで通りの農場経営をしながら日曜日に少しずつ金を掘り出すという生活を1年間も続けます。
当然従業員たちの間から金脈の話は外に漏れ、地の果ての出来事とはいえ、一年後には地球の裏側までこのニュースは伝わり、世界中から、この金脈めがけて一攫千金を狙う男たちが殺到します。(これが1849年。実はフォーティーナイナーズの由来はこんなところにあります。このときカリフォルニアに金を掘りにきた男たちをフォーティーナイナーズと呼ぶのです。)
瞬く間にサッターさんの農場は、このフォーティーナイナーズ達によって蹂躙され、全財産を奪われ、子どもたちと共に逃げ出さざるを得ませんでした。
(とはいえ、サッターさんだけでなく、ゴールドラッシュで金を採掘して儲けようとした人で、その金によって今も記録に残るほどの成功を納めた人は寡聞にしておりません。)
では、このとき、サッターさんはどう立ち回ればよかったのでしょうか。
2つの例をあげます。
サム・ブラウンさんという人は、サッターさんの農場に出入りしてた商人だったので、比較的早く金脈発見のニュースを知りました。
ブラウンさんは、このとき、金を掘らずに、西海岸にあったシャベルや桶やテントといった、金採掘に必要なグッズを買い占めに走りました。
あらかた買い占めたところで、彼は金脈発見のニュースを街中にふれて回ります。
ゴールドラッシュの引き金をひいたのは実質的にはこのブラウンさんだと言われる所以です。
もちろんブラウンさんは大金持ちになりました。
フォーティーナイナーズは金採掘をするためにブラウンさんから道具を買うしかなかったからです。
もう1人、リーバイ・ストラウスという人もいる。

この人は、フォーティーナイナーズ相手にテント用のデニム地で採掘時にはくズボンをつくって売りました。
そしてポケットが破れないようにリベットで補強し、特許をとりました。

そうです、リーバイスの創業者がこのストラウスさんです。
さて、ここから得られる教訓はなんでしょうか。
「ゴールドラッシュでは儲けた人もいれば儲けなかった人もいる」という気づきでは何の学びもありません。
これを
「まだ法規制の及んでいない分野で金脈が発見されたとき、金を掘るのではなく金を掘るのに必要な道具を独占提供すると成功する。」

という教訓と考えるとどうでしょうか。
例えば、IT革命という無法地帯の金脈が発見されたとき、

数多のベンチャーがIT技術によって様々なサービスを生み出しましたが、
最も成功したのは、
OSというスコップにWindowsと名付けて提供したマイクロソフトと、CPUという金桶を独占したインテルでした。
新しいことが起きているように思えるときほど歴史は繰り返されています。
長くなりましたが、
ブロックチェーンやら人工知能やらといった金脈に向き合って新しいビジネスモデルを考えるとき、
ここでのスコップは何なのか、ここでのジーンズは何なのかを考えてみると、
色んなアイデアが出てくるかもしれませんね。

※ちなみに、ゴールドラッシュ物語の悲劇の主人公サッターさんは、その後、カリフォルニアがアメリカ領になった後、自らの権利回復を求めて訴訟を起こしまくり、
勝利しました。

ところがそのニュースに怒った民衆が暴動を起こし、サッターさんの子どもは3人共殺され、農場は火の海になったそうです。
ゴールドラッシュの物語は多数の教訓に満ちています。

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