Whyの悲劇

経営戦略には、外部戦略と内部戦略があって、車の両輪ですよ、というお話は何度もしてきました。

最近ではインナーブランディング、インナーマーケティングの重要性もかなり説かれるようになりましたが、

実際には、うまくいっていない中小企業をみると、

もっと手前の段階の、

基礎的人材育成のところで躓いていることが多いように感じます。

基礎的な人材育成のノウハウについては、それこそ1人でも部下がいれば必要になってくる分野であるために、

誰しもが一家言もっているという現象が起こり

実際にきちんと体系だてて勉強してる人が少なく、それぞれの自己流がまかり通ってしまう

というある種の危険な分野です。

僕自身は人材育成の専門家ではないのですが、うちの会社は創業3年程度でスタッフ12名ですという自己紹介をすると、

人材育成周りの相談にのってほしい、幹部研修してほしいというお話がたまにあります。

特に秘伝の技があるわけでもないので、基本的にはめちゃめちゃベーシックな話をします。

例えば、人材育成の近道は、

Whyを使いこなすことです。

というお話をします。

誰かを指導するとき、単に作業内容の指示を出すだけでは、生産性の高い指示とは言えません。

Whyに応える理由を伝えなければいけません。

例えば、

この製品についての既存広告の費用対効果を3日以内にまとめといてほしい。

という指示は30点です。

whyがないからです。

この製品について、来週新しい広告業者と打ち合わせするから資料がいるのか、

はたまた今後の経営計画を練るために必要なのか、

あるいは広告担当者の人事評価に使うためなのかで、

資料の様式、クオリティー、強調するポイントなど、全く変わってきます。

何のために、その作業が必要なのか、しっかりと共有して指示しましょう。

またこのとき、whyとともにHowをどこまで伝えるか、というのはそれぞれの流儀でしょうが、

どうやってやればいいかを伝えない場合でも、

「どうやってやればいいか」はどうすればわかるようになるかは、教えましょう。

脱線しました。

ことほどさように、部下や後輩の指導にwhyを伝えることは重要なのですが、

実は、常にwhyを伝えればいいというわけではありません。

ここが難しいところです。

どんなときにwhy伝えない方がいいかというと、

先に頭で理解してしまうことで、心の底からの共鳴を妨げてしまうときです。

というよりも、頭で理解した気になってしまうことが危険な場合ですね。

例えば、

部下にどうしても会って話を聞いてほしい人がいるとします。

その人の話を聞けば、必ず刺激を受けて仕事のモチベーションをあげるだろう

と思って声かけするとしても

「〇〇さんに、紹介したい人がいる。その人の話、特に若い頃の苦労話を聞くと、仕事へのモチベーション上がると思うから一緒にご飯を食べよう」

と言われたらどうでしょうか。

whyを丁寧に説明するほど効果は薄れます。

相手がいくら魅力的でも、なかなか素直に話を聞いてモチベーションにつなげられないのではないでしょうか。

教育の非対称性という問題につながる話です。

子どもに英語の勉強を頑張らせようと思ったら、英語を身につけることがどれだけ世界を広げてくれるかを語り尽くすよりも、

無理やりでも3ヶ月L.Aにでもホームステイさせた方が効果的だというのは肌感覚としてわかると思います。

この場面は、Whyをしっかり伝える場面か、あえて伝えない方が効果的な場面か、

それを見極めれるようになれば指導者として1つ上のステージにいけると思います。

 

マネジメントの基礎理論は、さくっと読めるけど名著。最後の方の外部戦略の方向の話は読み飛ばしても前半は穴があくほど読むべし。

 

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