マーケティング思考を身につけるレッスンの基礎の基礎に、
解決すべき課題は何かを考えよう、というのがあります。
基礎の基礎というと簡単なようですが、奥が深いのが、この解決課題ワークです。
マーケティングの教科書の一丁目一番地に
ドリルを買う人が欲しいのは穴である。
という格言があります。
これは、
1968年に出版されたT・レビット博士の「マーケティング発想法」に書かれていて有名になった言葉です。
(元を辿れば、レオ・マックギブナという人の言葉だそうです。マックギブナ氏の言葉を正しく引用すると「昨年、4分の1インチ・ドリルが100万個売れたが、これは人びとが4分の1インチ・ドリルを欲したからでなく、4分の1インチの穴を欲したからである」というもの。蛇足。)
この格言からは2つの重要な視点が与えられます。
1つは、
顧客が本当に解決したい課題は何なのだろうかと常に顧客目線に立つ必要があること
もう一つは、
自社の提供している課題が、顧客に提供してる価値は何だろうかということを常に意識すること。ドリル会社が与えている価値はドリルではなく、穴だということ。
そして、このドリルではなく穴が欲しい、問題を突き詰めていくのが解決課題ワークです。
例えば、
あなたが、ある川の側で、何か商売をしようとしています。
まずは、顧客ニーズを把握しようと、通りすがりの何人かの人に話を聞くと、皆口を揃えて
「川の向こうにいくための橋がほしい」
と言います。
さて、ここでの解決すべき課題は何でしょうか。
正解があるわけではありません。
そうか橋をかけて欲しいのか、じゃあ橋をかけて通行料金をとるビジネスをしよう。
というのも正解です。
なんだ今の渡岸手段が、筏しかないから時間がかかるのか、じゃあ橋じゃなくても高速船で渡れるようにしよう
というのも正解です。
さらに、
そうかみんな対岸のセブンイレブンに行きたいのか、じゃあこちら側にセブンイレブンを作ろう
というのも正解です。
さらにさらに、
そうかみんな対岸の友達と話をしたいのか、じゃあ携帯電話を両岸で売ろう
というのも正解です。
顧客が解決して欲しい課題というのは、
渡岸手段の高速化なのか、
コンビニが身近にほしいのか、
対岸の住民とのコミニケーション手段なのか、
それによって、提供するソリューション手段は全く変わってきます。
スティーブ・ジョブズの名言で
「顧客が本当に何が欲しいのかを見つけることが、あなたの仕事だ。」
というのがあります。顧客のニーズを探るということの意味を履き違えないようにしてください。
わかりやすい例として、
ティファールの例があります。
ティファール登場前、電気ポット市場はまさに飽和市場で、各社製品はとにかくポットの性能をあげること、様々な機能を付加することに凌ぎを削っていました。
象印 電気ポット 5.0L グレー CD-PB50-HA
9,219円
Amazon
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たとえばこの象印の1万円弱の商品は、
■断熱材使用の 「省エネ設計」
断熱材の使用で電気代を節約します。
■残量が少なくなるとお知らせ 「給水お知らせブザー」
水量が約500mL以下になると、センサーが感知。給水ランプが点灯し、ブザーが鳴ってお知らせします。
■水量がとっても見やすい 「パノラマウインドウ」+「赤玉水量計」
前からでも斜めからでも残量を確認しやすく、水量計に赤玉が入ってさらに見やすい!
■気になる蒸気を約90%カットする 「蒸気セーブモード」(選択式)
沸とう(約95℃)後にヒーターをOFFし、蒸気を約90%カット。湯気を気にせず置き場所を選べます。
※周囲の環境などによって蒸気量は異なります。尚、蒸気量は抑えられますが、結露ややけどにご注意ください。 98度保温選択時には、蒸気セーブモード、蒸気レスモードは選べません。
■カップめんなどに便利!「3分タイマー」
3分経つと、キッチンタイマーのようにメロディーでお知らせします。
■使わない時間はタイマーで節約 「5段階節約タイマー」 6・7・8・9・10時間
夜間や外出時、タイマーをセットしておけば、設定時間後に湯沸かしが完了するので、保温電気代が節約できます。
■ゆっくり少量ずつ注げる 「カフェドリップ給湯」
少量でゆっくり注げるのでお湯が飛び散りにくく、じっくり蒸らせます。
と、まさに日本家電メーカーの技術の粋が詰まっています。
この機能一覧を読んで、あなたは買いたくなったでしょうか。
そんな中、ティファールが、ポット市場に殴り込みをかけました。
顧客が欲しいのは、電気ポットではなく、熱いお湯ではないか、と考え直したわけです。
ティファール 電気ケトル 「アプレシア プラス」 コンパクトモデル カフェオレ 0.8L BF805170
2,727円
Amazon
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とにかく機能を削り、早く熱いお湯が手に入るというだけのケトル。
瞬く間にティファール製品は市場を席巻しました。
既存メーカーは、泣く泣く同様の低価格製品を出さざるを得ませんがそこにはこれまでの蓄積ノウハウは生かせず、
デザインで劣る日本メーカーは10年経っても挽回し切れていないのが現状だといっていいでしょう。
こんな技術があるけど、これを利用してこんな機能を付加できないか
という発想は危険です。
顧客はどんな課題を抱えているのか、何を解決して欲しいのか。
そこから一歩も離れない思考。
解決課題ワーク、事業アイデアを練る際に是非立ち戻ってみてください。
※ドリル格言については、そこからきた「ドリル売るには穴を売れ」という名著があります。
小説仕立てで非常に読みやすいマーケティング本。
思考フレームワークも整理されていて、おすすめです。
ドリルを売るには穴を売れ
1,543円
Amazon
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