前の投稿で、起業家には信長的要素が必要だというお話をしました。
新しいビジネスモデルを信じ切って突き進む力がなければゼロをイチにすることはできません。
(信長は大名の子どもですが、軍事面でも統治面でもゼロイチの人です。)
でも、ゼロをイチにする力と、
1を10にしたり、10を100にする力は、全然違います。
1を10にする中で、最も大事なのことは、
どれだけ『人たらし』になれるか
なのです。
その点で、秀吉は信長や家康よりも数段上でした。
信長がつくった当時としては画期的な数々の仕掛けを伴った天下統一事業を引き継いだ秀吉は、
その人たらし力を存分に発揮して瞬く間に全国制覇をします。
たとえば、秀吉を主人公にした司馬遼太郎の新史太閤記にはこんなシーンがあります。
新史太閤記 (上巻) (新潮文庫)
853円
Amazon
|
秀吉は家康に対して戦を挑んで勝利したことはありませんでしたが、あらゆる外交手段を駆使して脅しあげて、ついに大阪に服従を誓いにこさせることに成功します。
いよいよ、明日家康が登城して秀吉に面会するという日の夜、
家康の宿舎に、秀吉が単身ノーアポで不意に現れます。
家康の部下達がオロオロする中、秀吉は、家康に向かって爽やかに頭を下げて、
内心色んな想いがあるのはわかってるけど、天下国家のために、明日の面会時は、気持ちよく頭を下げてくれ、この通りだ
と頼み込みます。
家康は、この太閤秀吉の人たらし力に舌を巻いて秀吉が生きてる間は決して反抗することはありませんでした。
このエピソードは徳川実記の記載を基にしていると思われるので100%史実かはわかりませんが、それでも、似たようなことはあったのでしょう。
まさに、殺されてもおかしくない相手のところに、不意に飛び込んで意表を突き、小さなプライドを捨てて頭を下げて、大きな戦略目標を獲得する。
人たらし秀吉の真骨頂だと思います。
ビジネスの世界でも、いいビジネスモデルさえあればどんどん商売が大きくなる、というほど甘い話はありません。
新しいビジネスモデル確立+人たらし力
信長➕秀吉でスケールアップできるのです。
うまくいっているベンチャーは、社長がこの要素をうまく同居させて使い分けれているか、もしくは、秀吉的要素の補完のために、優れたパートナーがいることが多いです。
とはいえ、この人たらしの力というのは、非常に属人的なものです。
属人的なものだということは規模と期間に限界があるということです。
秀吉の場合はその器の大きさから日本をとるところまではいきましたが、東アジアを治めることはできませんでした。
また、秀吉の死後、豊臣政権は直ちに瓦解します。
人たらし力によってスケールアップした事業を、維持発展させるための仕組み作りができていなかったわけです。
跡を襲った家康はこの点に腐心するわけですが、それまた後日。
まとめとしては、
新規事業成功のためのスリーステップとして、
1、信長ステップ
→ 新しい発想で、批判を恐れず突き進む
2、秀吉ステップ
→ 人たらし力で、スケールアップ
3、家康ステップ
→ 属人的要素を排除して、仕組み作りで維持発展
というのを意識すると、経営者の今やるべきことが見えてきます、というお話でした。