中小企業診断士向けに事業承継に関するセミナーをすることになって、ぼちぼちと準備をしています。
事業承継というと、税制面や遺留分対策、無議決権株式発行など、
税務、法務面の作業をイメージしがちですが、
実際の事業承継の急所は、
承継しようとしている事業とは何なのか、ということを可視化するところにあります。
この作業をしっかり行った事業承継はかなりの確率でうまくいきますが、
ここを飛ばして、
事業承継ではなく、会社承継になってしまうと
なかなか上手くいきません。
経営者の交代をきっかけに事業が好転していかなければその事業を承継は成功とはいえないでしょう。
では、事業の可視化とは何か。
まずは、会計の可視化
税務上の会計と、経営管理上の会計は全く違う、というのは少しずつ浸透してきたように感じますが、まだまだ理解してない会社も多数あります。
特に創業者は、発展の歴史をたどっているし、日々決済しているので、
頭の中に管理会計が入ってるので問題ないことも多いのですが、
後継者は違います。
結局この会社は、毎月、何でいくら儲けて、いくら出て行っているのか。
全く答えられない人も結構います。
まず、この可視化です。
キャッシュフローの可視化をしたら債権債務の可視化もしなければいけません。
役員貸付、役員借入の多寡は事業承継処理に非常に重要です。
もちろん金融機関からの借入額や与信余力、借入スケジュールも整理します。
さらには契約関係の可視化。
創業者が事業が小さいころから付き合ってきた取引先なども多数あって、契約関係がはっきりしない、契約書がないなどよくあります。
事業承継の1つのオプションとしてM&Aがありますが、M&Aではまず、契約関係などのデューディリジェンスをして会社を評価しますが、契約関係などが整理されていなければ評価のしようもなく値段がつかないこともよくあります。
契約関係の一部ですが、労務関係の可視化も必要です。
創業者が古参社員との間で待遇や人事について交わしている口約束が後継者との間で反故にされた結果、もめたり人心が離反するというのはよくあります。
労働契約を結んだり就業規則を整備したりは、承継前にきちんとしておきましょう。
また、会社にとって経営者がそれまでどのように経営してきたかも可視化しましょう。この培われてきた経験、歴史こそ最も重要な資産だったりします。
たとえば、こんな商売に手を出したけど失敗した、
こんな商品開発しようとしたけど、ここがネックで断念した、
この取引先とは昔こんなことがあった
などなど
年表にしても1年1年どんな年だったかを思い出していきましょう。
最後はビジネスモデルの可視化です。
このブログでも何度も書いて来ましたが、ビジネスモデルをキャンバスに落とし込むという作業は事業承継とか関係なく毎年やるべきですが、
事業承継を考える際には、より精緻に作り込むべきです。
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この作業を通じて、
それぞれの事業の顧客はどんな人で、どんな価値を求めていて、自社の強みはどこで、というのが見えてきます。
今後の課題も見えてくるでしょう。
と、ここまでが、まずは事業承継の大前提としての事業の可視化です。
準備の準備ですね。
これを踏まえて、事業承継のロードマップを描くところから本当の事業承継作業ははじまります。
もちろんこの可視化の作業を1週間でできる会社はありません。
3ヶ月でできれば優秀です。
事業承継というと、なんか専門家に頼んだら半年ぐらいで終わるんちゃうかと思ってる方がいますが
大間違いです。
可視化半年、準備2年、仕上げ半年。
合計3年。
これが標準スキームだと思ってください。
セミナーでも、とにかく早めに取り組みましょうというのは万全の事業承継のためにはそれだけ時間がかかるからです。
3年間バイタリティを持って取り組めるうちに事業承継しましょうね。
とお話ししています。
とはいえ、自分が手塩にかけた子どもを手放すのは断腸の思い。
それは痛いほどよくわかります。
事業承継のお手伝いのお仕事は、この痛みを共有することでもあります。
そして、後継者には、現経営者のこの想いを引き継いでもらうことが大切だと思っています。
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★事業承継なんかいちいち専門家に頼まんでも自分でできるわ、という方に、さすがにそれは無理ですよと理解してもらうときに使う本です。
餅は餅屋、たこ焼き屋はたこ焼き屋です。